ご入学おめでとうございます。
本日ここに521名の学生をお迎えすることを大変嬉しく思います。
また、新入生のご家族、関係者の皆様にはこれまでのご苦労とご努力に敬意を表し、ご入学を心からお祝い申し上げます。そして、お茶の水女子大学を支えてくださるご来賓の皆様と、本学にご支援をいただいております多くの方々に深くお礼を申し上げます。
お茶の水女子大学は、国によって設置された最も歴史のある女子高等教育機関であり、今年、創設135年目を迎えます。また、新制大学としては、今年が 60周年に当たります。この間、時代が著しく推移する中でも、多くの優れた学生がこの大学で学び、そして、卒業後、国の内外のさまざまな領域で活躍し、社 会を牽引してきました。それが可能であったのは、お茶の水女子大学の教育の特色に依拠していると私は理解しています。
お茶の水女子大学の教育の特徴は、少人数教育と、高度な教養教育、そして専門的思考の基礎をなす基盤的教育にあります。
少人数教育は、学生と教員?職員との距離が近く、いわば、オーダーメイドのような教育の実現が可能であることを意味します。学生は授業で発言する機会が多く、また、授業以外でも学生と教員とが親しく会話する姿がよく見られます。
昨年度からは、「21世紀型リベラルアーツ」教育を開始いたしました。時代の変化に即した高度な教養教育は大学の重要な使命の一つです。情報化が進み、 国際化が著しく、価値が多様化する現代において、大学で教授すべき教養とは何か、を教員が議論し、創り上げている教育プログラムです。
本学のこのような教育の取組みと、研究の先進的活動に対して、先月、皇冠比分网_皇冠体育备用网址-【官网认证】評価委員会から最高の評価を得ました。国立大学は法人化されてからそれ ぞれに中期的な目標を定め、それに基づいて評価がなされることになりましたが、私たちは、この評価に甘んじることなく、学生の教育に力を注いで参ります。 そして、学生の皆様には、この大学での日々が将来の確かな礎となることを期待しています。
大学での「学び」がこれまでと最も異なるのは、正解のない世界に身をおくことにあります。何が真であり、何が正しいか、を自ら判断する力を習得する場が大学であると私は考えています。
「cogito ergo sumわれ思う、ゆえに我あり」というデカルトの命題は、考えることが人間の存在の根拠であることを表しています。考える、とは自ら考えることです。それ は、他人の主張や、既に当然と思われていることを、もう一度問い直してみることでもあります。
多くの情報があふれている今日、それらを精査する力を身に付けるには、多くの知識が必要です。ですが、知識が備わっていればよいというものでもありません。大学は、これまでに蓄積されてきた知識を習得すると同時に、共に考える場でもあります。
そして、確かで緻密な知識と批判的な精神が、高度な専門的思考の基盤となります。
ところで、大学の重要な式典が行われるこの講堂は「徽音堂」と名づけられていますが、「徽音」とは、「美しい音」という意味であり、また「よい言葉」、 「立派な教え」や「徳」をも意味します。新入生の皆様には、この大学で学び、「知」と「徳」を身につけ、自ら主体的に判断することの出来る人間として成長 していただきたいと思います。
また、私たちの校歌は、「みがかずば、たまもかがみもなにかせん、なまびのみちもかくこそありけれ」というものです。
自らを練磨し、輝ける知性と品性を身に付けていただきたいと思いますが、目下、そのための第一歩となる新たな教育プログラムも試行を開始しています。
そして教育の場となるのは、教室や実験室だけでなく、キャンパス全体がそれにあたります。図書館もその一つです。本学の附属図書館は、国公私立大学の中 で、今、最も注目されています。それは、小さいながら、多機能な空間で、毎日、学生の約半数が図書館を訪れるほど生き生きとしているからです。皆様はきっ とここで多くの情報、さまざまな知識、そして大切な友人と出会うことが出来ると思います。
図書館の取組みは、小規模ではありますが、大きな大学ではなし得ないきめ細かな工夫を本学が実行した一例です。
お茶の水女子大学の教育はこのように、さまざまな場面で特色をもって展開しています。
また、お茶の水女子大学は、文字通り女子大学です。ここでは、女性に全ての役割が与えられます。この大学での経験を通して、どのようなポジションについても戸惑うことはないように訓練された、という感想をよく聞きます。
本学には、卒業生の同窓会である「桜蔭会」がありますが、同窓会の会員の皆様の多様で活発な活躍の様子からしても、お茶の水女子大学の教育が確かで有意義であると確信できます。
女性の活躍がますます求められてゆくに違いない社会状況の中で、皆様がこの大学で、その能力を存分に磨かれることを心から期待しています。
ちょうど40年前、私自身もこの大学に入学しました。そして、今日はじめて学長として「告辞」を述べましたが、皆様とご一緒に、私もお茶の水女子大学に新たな歴史を刻みたいと思います。
ご入学まことにおめでとうございました。
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