本日は大勢の皆様においでいただきまして、まことにありがとうございます。
昨日と本日、の二日間、全学を挙げてお茶の水女子大学の教育内容と学生生活をご紹介いたします。
今皆様がいらっしゃいますこの講堂は、毎年4月に入学式が行われるところです。
この講堂は「徽音堂」と名づけられています。「徽音」の「徽」とは、「徽章」の「徽」で、「しるし」や「よさ」を表します。したがって、「徽音」は、 「美しい音」、また、「立派な教えや徳」を意味するといわれています。お茶の水女子大学での学生生活は、この場からはじまります。そして4年後、知と徳を 備えて、ここから社会へと新たなスタートを切ります。
この建物は、今から77年前に、大学がお茶の水の地から移転してきたときの建物です。
大学の歴史はさらに長く、1874年に東京女子師範学校の設置が決まり、翌年1875年に開学して、ほぼ135年にも及びます。
本学は、創設時から、女性の自立と、教育者として日本の知的水準を高めることを教育の目標としてきました。そして、このことが、先駆的な女性、さきがけ となる女性を多く社会に送り出すことになりました。日本で最初の女性医師、日本初の理学博士や農学博士はいずれもこの大学で学んだ人々です。また、大学の 創設に力を尽くした人々もいます。東京女子大学(1918年)の学長となった安井てつ先生や、現在の共立女子大学の創設に携わった鳩山はる(春子)先 生、[共立女子職業学校1886年]、現在の日本女子体育大学の二階堂トクヨ先生、[二階堂体操塾1922年]です。
そして、本学の同窓会が設立した桜蔭学園があります。
これらの本学の創設にまつわる歴史は大学資料館で展示をしておりますので、お時間がありましたらお立ち寄りください。
今、この大学が教育の目標としているのも創立時と同じように、学生が人間として自立することであり、新たな視点を持って、リーダーシップを発揮する力を備えた女性を育成することです。
最近の卒業生は、教育、研究機関はもとより、金融や出版などメディアなど多様な領域で活躍しています。その分野が多岐にわたること、そして、職業生活が長くに及ぶことが、この大学の卒業生の特色といえます。
私たちが特に力を入れているのは、学生一人ひとりの潜在的力が発揮できる教育環境を整えることですが、そのひとつが少人数教育です。この大学では、学生 と教員の距離が近く、授業で発言する機会が多くあります。このことの意味は、発言のつど、思考を整理し、論理的に構成し、表現する訓練が日常的になされる ということです。
また、この大学には三つの学部がありますが、学部間の壁が低く、異なる領域の交流が盛んです。つまり、教員同士の距離も近いといえます。昨年から開始した、「21世紀型リベラルアーツ教育」が実現可能であったのもこのような状況に依拠しています。
私たちの身の回りの問題を解決するには、多様な分野の知識が必要です。問題を発見する力、分析する力、そして解決に導くための知識がぜひとも必要です。これらを学ぶのが本学のリベラルアーツ教育です。
さらに、この大学では、通常のカリキュラムに加えて、特別プログラムが多数行われています。その数は現在30を数えます。たとえば、「キャリア支援プロ グラム」、教育研究の国際拠点を意味する「グローバルCOEプログラム」、「若手インターナショナルトレーニングプログラム」など、国際的な教育?研究機 関としてのプログラムがあります。これらのプログラムによって、学部の学生にも新しい視点を持つことや、新しいテーマを学んだり、海外で学ぶ機会を提供し たりしています。
これらの本学の活動は、国立大学の中でも高く評価されています。2004年に国立大学が法人化された際に、それぞれの法人は6年間の目標と計画を設定し ました。そして、今年3月に、教育、研究、社会連携や国際交流に関して、目標と計画に対する達成状況が評価され、お茶の水女子大学は、これらの項目全体と して、90ある機関の中で最も高い評価を得たのです。私たちはこの評価に甘んじることなく、さらに充実した教育と研究に力を注ぎたいと考えています。
学生にとって、「大学で学ぶ」ということは、自分の思考を鍛え、可能性を試し、そして自らをプロデュースする力を養うことであると、私は考えています。 そのためには、確かな知識、明晰な思考力、あらたなものを創り出す勇気が必要です。四年間をその訓練にあて、自由に学び、勇気をもって新しい可能性を試し ていただきたいと思います。学生時代はそのための貴重な時間です。
この大学の学生はすべて女性です。それは、何をなすにも女性があらゆる役割を担うことを意味します。その機会を存分に活用して、多様な力を養うこと、それができるのが女子大学です。
また、この大学では、学部生が2000人、大学院生が1000人です。このキャンパスの3人に1人が大学院生ということです。そして、毎年約40人が博 士の学位を取得して研究者の道を歩み始めます。この点で、本学はアカデミックな雰囲気があるともいえます。つまり、静かに学べる環境です。
他方、立地にも恵まれています。山手線の内側に位置し、交通の便がよく、音楽会や展覧会そして買い物にも便利です。学生生活にとってふさわしい環境にあるといえます。
また、来年度中には、小さいながら新しい学生寮を建設します。これは、共に住まい、共に学び、共同生活を通して人間としての成長を期待する寮です。この大学の教育を象徴させるものにしたいと考えています。
女性の活躍は近年確かに進んできてはいますが、女性の社会的活躍を示す指数は、国際的には、いわゆる先進国の中できわめて低いのが現状です。国立の女子大学として、優れた女性の能力をいっそう発揮できる環境を提案する主導的役割を果たすことも本学に求められています。
お茶の水女子大学は、「学ぶ意欲のあるすべての女性にとって真摯な夢の実現される場として存在する」ことを目指しています。真摯な夢を実現すべく、来年4月に皆様をここにお迎えできますことを楽しみにしております。
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