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2026年2月19日更新
小泉郁子賞選考委員会委員長
お茶の水女子大学 文教育学部長 新名 謙二
第10回小泉郁子賞選考委員会は慎重に審議を行った結果、下記の者を小泉郁子賞候補者として本学学長に推薦し了承を得ました。
「小泉郁子賞」設立趣旨についてはこちらをご覧ください
お茶の水女子大学賞「小泉郁子賞」
岸 まどか 氏
(ルイジアナ州立大学英文科 研究員)
岸氏は19世紀末から20世紀初頭のアメリカ小説を中心に、ジェンダーやセクシュアリティ、人種などマイノリティの問題に関心を持って研究してきました。その成果は、2024年にオックスフォード大学出版局から出版された単著The Suicidal State: Race Suicide, Biopower , and the Sexuality of Populationに結実しました。本書はモダニズム文学研究を牽引する学術雑誌Modernism/Modernityの2024年11月号において書評され、「精神分析的文学批評、批判的人種理論、生物学の支配に対する介入」としての有効性を高く評価されました。
岸氏はアメリカ在住の日本人アメリカ文学研究者という自らのポジショニングを強く意識し、その立場からも活動しています。ルイジアナ州立大学においては、ダイバーシティ推進委員会の一つとしてアジア出身者?アジア系アメリカ人?太平洋諸島出身者の委員会(Asian, Asian American, Pacific Islander Caucus)を立ち上げました。
岸氏の研究者としてのもう一つの重要な活動は、ジェンダーやクィア理論の日本語への翻訳であり、ジュディス?バトラー、イヴ?コソフスキー?セジウィック、ローレン?バーラントらの著作の翻訳に携わってきました。これらの重要な理論家、批評家の紹介は日本におけるジェンダー研究、クィア研究のみならず広く人文学的「知」の発展にとって極めて有用であり、重要な貢献となっています。岸氏は本学の故?竹村和子教授の、著作だけでなく翻訳をとおしてフィールドや理論を構築していく姿勢に強く憧れたとのことで、本学のジェンダー研究の精神と近いところにあり、日本においても翻訳や学会発表、集中講義などを通じて文学研究、文学理論の普及に貢献し、女性研究者をインスパイアする人物であるといえます。
以上の理由から本選考委員会では、岸氏は人文社会科学の諸分野において顕著な研究業績を挙げた者に対して授与される小泉郁子賞受賞者として大変ふさわしい方であると判断しました。