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2014年10月22日更新
湯浅年子賞選考委員会委員長
お茶の水女子大学理学部長 菅本晶夫
第2回湯浅年子賞は、2014年5月21日に募集を開始し、平成26(2014年)7月31日に募集を締め切りました。 7件の推薦を受け付け、選考委員会において慎重に審議を行った結果、下記の2氏を、湯浅年子賞「金賞」及び「銀賞」候補者として本学学長に推薦し了承を得ました。
坂東昌子 氏(愛知大学 名誉教授)
坂東氏は、ρ中間子等の性質について、対称性の自発的破れの背景に局所対称性が隠れていることを用いて説明するという、著しく顕著な業績をあげ、氏のこの分野の研究における国内外での高い評価は揺るぎないものとなっている。
更に昭和35(1960)年代から今日に至るまでの50年間、女性研究者及び若手研究者の支援活動を極めて精力的に続けたことは、女性研究者支援におけるパイオニアとしての氏の歴史的存在意義の大きさを示すものである。
特に平成14(2002)年のWomen in Physicsパリ会議を契機に、日本物理学会男女共同参画委員会および男女共同参画学協会連絡会議を設立し、国に対して積極的に女性研究者支援を働き掛け、第3期科学技術基本計画等に女性の活躍促進が盛り込まれたことは、女性研究者の増加に繋がる著しく顕著な活動実績であると高く評価し得る。
関口仁子 氏(東北大学大学院理学研究科 准教授)
湯浅年子博士は、かつて核子が3つ集まって相互作用する「3体核力」を、少数核子の散乱を用いて実験的に見出そうと試みたが、当時の技術では不可能であった。
関口氏は、中間エネルギー領域(140MeVから270MeV)において、理研や阪大にある最新の実験装置を用いて、偏極した重陽子と陽子の弾性散乱実験を行い、微分断面積と偏極量を極めて高い精度で系統的に測定した。
その結果と厳密な理論計算との比較から、これまで明らかでなかった3体核力の顕著な寄与を示すことに世界で初めて成功した。この成果は、3体核力の理論的取り扱い、中性子過剰核および中性子星等の高密度核物質の状態方程式の研究に大きなインパクトを与えた。
このように、氏の研究業績は著しく顕著であり、将来原子核実験分野において国際的に活躍する期待を抱かせるものである。
以上