しゃべらない授業
柴坂寿子(人間文化創成科学研究科研究院 基幹部門 人間科学系 准教授)
自分の授業で工夫していることは何かと聞かれたら、「なるべくしゃべらない」ことと答えます。自分の研究領域は、日常の生活の場に出て、ありふれた日常の行動を実感しつつ観察して記述していくことが基礎にあり、言葉だけでは実感もないし、おもしろさも伝わりにくいので……というのはあくまで建前です。本音のところは、私自身が人前でしゃべるのは苦手なので、できればあまりしゃべりたくないし、無理にしゃべっても学生さんたちの眠気を誘うばかりだからです。
実習や発表:講義科目であってもなるべく実習や発表を取り入れて、しゃべる時間を減らす。例えば観察法の授業では授業外時間に各人が観察をして、清書した記録を授業に持ってきてもらい、数人のグループを作って学生同士の報告会をしてもらったりします。
イントロでの「復習」:授業開始後、先週の内容を質問し、学生に答えてもらう。
ビデオ資料を見せる:関連のビデオ資料を授業前半に先に見てもらい、後半だけ講義する。
図表・事例などをのせたプリント類を配る:話を聞くのではなく資料を見てもらおうという魂胆。学生が手元で見て、書き込みもでき、あとにも残る実物の方が、話に頼らなくてすむかなと思っています。事例は学生を当てて音読してもらいます。
板書:話した後に話の「見出し」や「まとめ」のような部分を板書してノートしてもらう。字が汚いのであまり板書も好ましくはないのですが、とりあえず解読可能な程度に書くよう努力はしています。
授業の小レポート:最後の10〜15分はノートや資料を見直して、コメントや疑問点を書いてもらう時間に。次回授業時には返却して、1枚の紙に続けて書いてもらい、学生自身の言葉による資料にしてもらいます。
学生のレポート類の利用:小レポートには教員より的確に内容を表現しているものもしばしばあり、次回のイントロに利用させてもらう。観察記録もアイデアや工夫のあるものを切り抜き資料にして利用させてもらっています。
以上のように、なんでもありで、特に特色ある活動はありません。「なるべくしゃべりたくない」という動機だけが一貫した「工夫」です。
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