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全学教育システム改革推進本部

「舞踊創作法実習」で思うこと

猪崎 弥生(人間文化創成科学研究科研究院 基幹部門 文化科学系 教授)

 私が担当している「舞踊創作法実習」は、舞踊教育学コースの3年生を対象とした専門科目の後期の授業です。その内容を平たく言えば、3年生が4年生になった4月に開催される舞踊教育学コース創作舞踊公演(卒業公演)で上演する作品の創作法を教えるための授業です。お茶大に着任して2年目の私は、これまで前任校でダンスを教えながら、舞踊公演を行ってきたにもかかわらず、舞踊創作の方法論を明確に教えられるかどうか不安でした。何故なら、自分の作品創作では、自分だけに通用するひらめき(言葉)、身体、動き、流れという回路があるのですが、そのようなそれぞれの創作法を教えるだけではなく、舞踊創作の理念と具体的な方法をどのように教えるべきかで悩んでいました。そこで、今回のFDエッセイを書かせて頂くことは、自分の授業への取り組みを振り返るという作業になり、思い出したくもない?という気持ちもありますが、今後の授業内容を検討するに当たって非常に有益であると思います。それでは、「舞踊創作法実習」で思うことを少し書いてみます。

1.踊る・創る身体へ
 「無」から「有」を生み出す創作を円滑に進めていくには、学生たちの身体への刺激をどのように行うのか、すなわち授業の導入部分のやり方が重要な鍵となります。ダンス実技の導入は踊るための心と身体の準備であり、単なるストレッチのような準備運動になってしまわないように、学生たちの身体を日常の身体から踊る・創る身体に変容させるための工夫が大切です。授業の導入部分が大切であるとわかっていても、私は毎時間の工夫が足らないので、いつも同じではない導入とそのバリエーションを考えなければならないと思います。

2.舞踊のおもしろさと恐ろしさ
 舞踊創作とは、身体の動き、そこから繰り出される動きの流れ、他者との関わり、物との関わりなど様々な要素を有機的につないで目に見える「かたち」あるものに創り上げることです。授業では、このような創作に関わる要素を用いながら、短いフレーズや小品を創作し、見せ合い、ディスカッションを行います。授業における創作課題は、毎時間違ったものを用意していますが、不思議なことに、非常に考えて見通しを持って授業に臨んでも、学生たちの反応によって授業の進め方を変更する必要もあります。それは、私が授業前に舞踊をいくら頭の中で創り上げていても、結局は学生たちの身体で捉えるダイナミックな舞踊にはかなわないということなのでしょう。舞踊のおもしろさを感じる瞬間ですが、対応を間違うと授業をだめにしかねない恐ろしい瞬間でもあります。

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