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2015年4月4日更新
新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。
本日、527名の新入生をお迎えし、お茶の水女子大学の歴史に、新たな1ページを書き加えることが出来ますこと、とても嬉しく思って居ります。
ご家族やご関係の皆様にも、謹んでご入学をお祝い申し上げます。
また、御来賓の皆様には、お忙しい中、ご臨席を賜りまして、まことに有難うございます。
今年度は、スロバキアとインドネシアからの留学生の方々をお迎えしています。この会場に、日本の国旗と共に、留学生の方々のお国の国旗も掲げてありますが、毎年、国境を越えて、いろいろな国からお茶の水女子大学に留学生をお迎えできますことも、私たち教職員にとりまして、大きな喜びです。
お茶の水女子大学は、1875年(明治8年)に国が設置する女性のための初の高等教育機関「東京女子師範学校」として、文京区の「御茶ノ水」の地に開校されました。その後、教育制度の変遷に伴って、東京師範学校女子部、高等師範学校女子部、女子高等師範学校、東京女子高等師範学校と組織と名称の変更を経て、1949年(昭和24年)に、諸先輩のご努力によって、新制大学へと移行し、今年創立140周年を迎えます。
秋には140周年記念式典や行事が予定されていますので、140周年の記念すべき年の入学生でいらっしゃる皆さまには、是非、様々な行事等へのご協力とご参加をお願い致します。
新制の国立大学として「お茶の水女子大学」の設置を求めた文書には、「各分野にわたって指導的地位に立つ女性を養成することが本学の使命である」こと、「指導的人物の育成には教養と専門性が必要である」ことが述べられており、諸先輩たちの先見性には、驚かされます。
こうして、長きに渡って、本学には「教養と専門性を備えた女性リーダーの育成」が期待されてきました。このことは、現在でも変わることなく、お茶の水女子大学のミッションとして受け継がれてきています。
新制大学に移行するに当たって、それまで長く愛称として親しまれていた「お茶の水」を大学の名称とし、小規模ながらも特色ある総合大学として歩み始めました。新制「お茶の水女子大学」には、東京女子高等師範学校の頃と同様に、多くの先駆的な考え方をもった優秀な女子学生たちが入学してきました。そして、女性たちの社会進出が困難な時代から、本学では一貫して、指導的な教育者や科学者?技術者等を育て、その実践を通して、女性の自立と社会的活躍を支え、社会の知的基盤の充実に寄与してきました。これまでに、数多くの優れた卒業生を世に送り出しています。卒業生達は、学術?研究、教育、産業、行政、報道など、多様な分野で優れた実績を挙げ、後に続く女性たちのために、道を切り拓いてくれました。
女性が学術研究を行うことが困難な時代から、本学の卒業生は世界的な視点に立って活躍してきました。例えば、わが国の女性科学者として、米国留学を実現し、初めて海外の学術誌に論文を発表して、初の女性理学博士となった保井コノさんや、女性で初の帝国大学生となり、二人目の女性理学博士となった黒田チカさん、また、第2次世界大戦前後の困難な時期に、フランスに渡って、ジョリオ=キュリー夫妻の許で国際的な女性物理学者として活躍した湯浅年子さん―この方は日仏両国にて学位を取得しています―、帝国大学で無給の副手として研究を続け、初の女性農学博士となった辻村みちよさんなどを先駆けとして、現在に至るまで、数多くの学者?研究者が育ち、国の内外で活躍しています。
わが国初の女医として知られている荻野吟子さんや、英国留学の経験を経てシャム国の教育に尽力し、その後東京女子大学の2代目学長を務めた安井てつさんも、本学の卒業生です。また、わが国の女子教育の推進のために学校設立に努力した卒業生も数多く、関東大震災の翌年1924年に本学の同窓会である桜蔭会が開設した「桜蔭学園」は、その中でも良く知られた例です。
2004年に、全ての国立大学は、国の組織から独立した「皇冠比分网_皇冠体育备用网址-【官网认证】」となりました。それまでは、国立大学は、国の機関として一律に決められた国の規則の下にあったのですが、法人化を境に、それぞれの大学が教育と研究に独自性を発揮して、大学運営をしていくことが求められたのです。
その際に、お茶の水女子大学は、国境を越えた研究と教育文化の創造と、世界中の全ての女性たちの夢の実現を支援することを目指し、『学ぶ意欲のある全ての女性にとって、真摯な夢の実現の場として存在する』との標語を掲げました。そして、学びたくても学ぶことのできない開発途上国の女性たちをも含めて、国籍や年齢を問わず、女性たちの成長と資質能力の開発を支援するための活動を開始しました。世界中の女性たちと学びを共有し、多様な文化と異なる価値観や考え方を持った人々と深く理解しあい、互いに切磋琢磨しながら、自らを成長させていくことのできる学園でありたいとの決意を持って、グローバルな女子教育へと舵を切ったのです。
その後さらに、「リベラルアーツ教育」、「リーダーシップ教育」など、特色ある教育システムを構築して、若い女性たちが、社会の中で自らが何をすべきかを知るための「学びの場」を提供してきました。本学に集う女子学生たちは、その学びの場において、社会に貢献できる人材となるために自己を磨き、将来への夢を育んでいます。
現在、私達を取り巻く世界は、大きな変化の時期を迎えて居り、社会環境が世界規模で変動する中で、人々の価値観や生活基盤が揺らいでいます。
今年は本学にとって140周年という節目の年だと申しましたが、同時に、今年は第二次世界大戦後70年という、日本にとって、とても大切な節目の年でもあります。日本が70年間にわたって他の国の人々や国土を害することなく、平和を守ってきたことは、世界に誇れる実績だと言えましょう。どうか皆さまには、私たちの国が守り続けてきた、平和への貢献という素晴らしい実績を忘れず、日本国民としての誇りを持ち続けて頂きたいと思います。
様々な国で争いが起こり、また、世界中で、様々な災害が頻発して人々の穏やかな生活が失われる事態が起こり、多くの人々の命が失われている状況がある中で、日々の暮らしが穏やかに続くこと、普通の生活を送ることが出来ること、人々が信頼し合い手を取り合って暮らせることの大切さを、心に刻んで頂きたいと思っています。
また、東日本大震災からの復興は、まだまだこれからです。日本と世界の将来を担っていく皆さまには、弱い立場にある人々への思いやりを忘れず、自分たちに何ができるかを、問い続けて頂きたいと願います。
グローバル化が進む社会では、複雑性?多様性を経験して多面的に自分自身と世界を見直し、自分とは異なる価値観や考え方を持った人々と深く理解しあうために、対話と実体験を重ねる学びが益々重要になっています。予測不能な未来に備えて、次世代を担う若い人たちが、国の枠組みを超えて、多様な世界の同世代の人たちとのつながりを深め、信頼関係を築いて互いに切磋琢磨することがきわめて重要です。
今、お茶の水女子大学では、社会における人間の在り方やそれを支える制度、生命の営みとその仕組み、自然現象と物質の成り立ち、人間生活を支え健康と幸福を維持するための科学?技術や芸術など、幅広く多様な教育と研究が行われています。そして、多様な価値観を持つ女性たちが共に学び合い、共生することによって、自己を磨き、真の国際人として活躍する力を培って行くことを願って、様々な取り組みを推進しています。
本日入学された皆さまが、お茶の水女子大学を「学びの場」として選び、入学して下さったことを、私達教職員は心から嬉しく思っています。そして、このキャンパスで充実した学生生活を過ごされ、広い知識と豊かな想像力を備えて、日本と世界の希望溢れる未来を創造することのできる優れた女性として成長されることを願っています。皆さまには、本学の140年の歴史に、新しい歴史のページを、しっかりと書き込んで頂きたいと思っています。
こころと身体の健康を大切になさって、学園生活を思い切り楽しんで下さい。これからの皆さまの実り多い大学生活を心からお祈りして、お祝いの言葉を結びます。
ご入学、まことにおめでとうございます。
平成27年4月4日
お茶の水女子大学長
室伏 きみ子