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平成30年度 学部入学式 学長告辞

2018年4月9日更新

平成30年度 入学式 学長告辞

512名の新入生の皆さま、ご入学おめでとうございます。
お茶の水女子大学の教職員を代表して、心からお祝い申し上げます。
また、お嬢さま方を、今日まで限りない愛情を持って支えてこられたご家族やご関係の皆さまに、謹んでお慶びと御礼を申し上げます。
ご来賓の皆様には、お忙しい中、ご臨席を賜りまして、まことに有難うございます。これからも、新1年生が本学で豊かな学びを続け、成長する姿をお見守り下さいますよう、お願い申し上げます。

今朝早い時間から、新入生とご家族、ご関係の皆さまが、新しくなった正門の門扉の前で写真を撮っていらっしゃる光景に出会いました。あの門扉は、第2次世界大戦の最中に軍によって供出させられて、その後ずっと仮の門扉が取り付けられていたものですが、昨年、卒業生や教職員の方々のご寄附等によって、昔の形に復元されたものです。丁度、供出当時に学生でいらした卒業生の方から、「新しく門扉が復元されて、涙が出るほど嬉しかった」とのお言葉を頂き、私たちも、卒業生や教職員の方々の70年以上もの念願が叶って本当によかったと、とても嬉しく思いました。
皆さまは、門扉が復元されてから、記念すべき最初の入学生です。

入学式が行われて居りますこの講堂は「徽音堂」と名付けられています。中国の周の時代の故事に由来する名称で、「徽音」とは「美徳」を意味します。本学に集う人々が、美徳ある人として育つことを願って、本学のシンボルでもあるこの講堂の竣工時に命名されました。本学の学生さんたちは、「徽音堂」で大学生活の一歩を踏み出し、4年後に「徽音堂」で卒業の日を迎えます。これまでお茶の水女子大学で学んだ方々がそうであったように、皆さまも、4年間の学びを通じて「美徳ある人」として成長して頂きたいと願っています。

なお、国境を越えてお茶の水女子大学に学びの場を求めて来られる方々への歓迎の気持ちを込めて、徽音堂には、日本の国旗や本学の校旗と共に、留学生の方々のお国の国旗を掲げています。今年は、学部と大学院を合わせて、ハンガリー、アフガニスタン?イスラム共和国、タイ王国、中華人民共和国、大韓民国、ロシア連邦、ウクライナの7カ国からの留学生をお迎えしています。
故国を遠く離れた日本に留学して来られた皆さまは、言葉や習慣、生活や考え方、文化や価値観の違いなどに、戸惑われることもあると思います。困った時には、ご遠慮なく、教職員や日本で生まれ育った学生さんたち声を掛けて、相談して下さい。これからの4年間、それぞれの夢の実現に向けて研鑽を重ね、この徽音堂で卒業の日を迎えて頂きたいと思います。

512名の皆さまが学びの場として選ばれたお茶の水女子大学は、1875年の創設以来、わが国の女子教育の先達として優れた女性達を育て、社会に送り出してきましたが、その間140年余りに亘って、本学が掲げて来た教育の理念は「国境を超えた研究と教育文化の創造を目指し、全ての女性たちの夢の実現を支援する」ことにあります。そして、本学における多様な学びを通して、広い知識や深い見識を身につけ、人類社会が直面する諸課題の解決と新たな価値の創造に役立てていこうとする気概と実力を持つ女性たちを育てることを目標としています。実際に、本学の卒業生の中には、平和で公正な社会の持続的発展のために貢献している方々が数多くいらっしゃいます。そんな方々の姿から、私達教職員も、多くのことを教えられています。

お茶の水女子大学は、文教育学部、理学部、生活科学部からなる小規模な大学ではありますが、大学院研究科における多様な専攻や、教育?研究に携わる特色ある機構やセンターを備え、それぞれが特色ある活動を推進すると共に、それらの組織間の垣根を出来るだけ低くして、学生さんたちが、多様な学びの機会を作れるような、工夫をしています。
また、多彩な学修空間を持つ図書館が一昨日リニューアルオープンしました。さらに、国際交流?地域貢献?世代間交流の3つの目的をもつ集いの場としての「国際交流留学生プラザ」が、来年3月初旬に竣工予定です。本学の学修環境を豊かにし、国際化をさらに推進して、皆さまに有益な経験を積んで頂きたいと考えて居ります。
このキャンパスを舞台に重ねられる学習と体験は、皆さまが将来の夢を形にするためのかけがえのない土台となるはずです。

本日、大学生としての一歩を踏み出される皆さまには、先ず、それぞれの夢を実現するための基礎となる「4つの力」を養って頂きたいと思っています。1つ目は「既成概念にとらわれず、原点に立ち返って考える力」、2つ目は「自分を信じて、忍耐強く考え抜く力」、そして3つ目は「新しい発想を生み出す力」であり、4つ目は「自ら判断し、その判断に責任を持つ力」です。これらの力を育てた上で、多様な人々と協働して、平和で公正な社会、人々が幸せに暮らせる社会を創るために努力して頂きたいと思います。そのためには、「様々な背景を持った人々と理解し合い、多様性を受け入れて互いに尊重し合う精神」と、「自らを相対化することのできる客観性」を身につけることが必要でしょう。そして、それらの基盤に立って、夫々の夢の実現に向かって挑戦し、これからの日本と世界を牽引する人材として、活躍して頂きたいと願っています。

もう少し具体的に、大学生としての学びの第一歩を考えてみることに致しましょう。
大学での学びは、これまで皆さまが経験して来られた学びとは、大きく異なっています。高等学校までは、解答が用意された問いに答えるような、一定の枠にはまった受身の学びが多かったと思いますが、大学では、皆さま自身が自由に、そして主体的?能動的に学びに関わることが必要です。学問の世界は、皆さまの前に大きく広がっていますから、それをどのように自分のものにしていくかは、ひとえに皆さま自身の考え方、対応の仕方に掛かっています。出来るだけ早く大学での学びの流儀を自分のものとして、それを楽しんで頂きたいと思っています。

学問の世界は、広く豊かで、時には美しくさえもあります。皆さまが学問する中で、自然の仕組みの巧みさや、法則の美しさを知る時の感激は、忘れられないものになると思いますし、人々が創造してきた文化や芸術などの豊かさを知ることも、素晴らしい経験になります。そうした経験に基づいて、広い視点から物事を見て、深く思考することで、新たな発見や独創的な理論が生まれるかも知れません。皆さまは今、そういった素晴らしい学問の扉を開こうとしているのです。
大学生活を送る中で、皆さまの世界は、社会においても大きく広がることと思います。多様な国や地域で生まれ育ち、異なる能力や経験をもった友人たちとの出会いや、大学外での活動の広がりも、皆さまに豊かな成長の場を与えます。
異なった環境や価値観の中で育ち、しかもそれぞれに素晴らしい能力や人格を具えた人々と共に、知的な活動や社会的な活動に自主的、積極的に関わり、研鑽を重ねることは、皆さまを大きく成長させてくれるものです。それこそが、まさに大学生活の醍醐味だと言えましょう。
また、皆さまの先輩たちは、学問に情熱を傾けると同時に、東日本大震災などの大規模災害で被災された方々の支援―特に維持や孤児の支援や、一人親の子ども達や一人暮らしのご老人など、社会的に弱い立場にある方々を支援するためのボランティア活動や、それぞれの趣味を活かし、新たな友人を作るためのサークル活動などにも、熱心に取り組んでいます。

皆さまはこれから、お茶の水女子大学の一員となられるわけですが、新たな場で、新たなことに取り組んでいく時には、それまでに予想しなかった困難に出会うことも考えられます。でも、困難を乗り越えるたびに、人は磨かれて、成長します。それが、自分でも気付かなかった能力や可能性に気付く機会ともなります。既に踏み慣らされた安易な道を歩むのではなく、時には、まだ誰も踏み入ったことのない道を選択する勇気を持って頂きたいと思います。大学生時代という貴重で贅沢な時間を有効活用して、自分自身の可能性を思い切り花開かせて下さい。本学の校歌「磨かずば、玉もかがみも何かせん。学びの道もかくこそありけれ」にありますように、自分自身を磨き、それぞれの夢を実現させて頂きたいと願っています。
なお「みがかずば」は、1875年の本学の創設に当たって、昭憲皇太后から下賜されたもので、それ以来、大学と附属学校で歌い継がれている日本最古の校歌です。
本日入学された皆さまが、お茶の水女子大学で充実した学生生活を過ごされ、日本と世界の希望溢れる未来を創造することのできる優れた女性として成長されることを願っています。
こころと身体の健康を大切に、学園生活を思い切り楽しんで下さい。
512名の新入生の皆さまとそのご家族、ご関係の皆さま方に、今一度お祝いを申し上げ、これからの実り多い大学生活を心からお祈りして、お祝いの言葉を結びます。
改めまして、ご入学、まことにおめでとうございます。 

2018年4月4日
お茶の水女子大学長
室伏 きみ子