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令和3年度 卒業式 学長告辞

2022年3月23日更新

卒業式

本日、卒業式を迎えられた230名の文教育学部生、130名の理学部生、146名の生活科学部生の皆さま、まことにおめでとうございます。
お茶の水女子大学の教職員を代表して、心からお祝い申し上げます。

皇冠比分网_皇冠体育备用网址-【官网认证】の感染が終息しない中で、今年度も皆さまだけの出席という形で卒業の日を迎えることとなりました。これまで皆さまの学びを励まし、支えて下さったご家族も、この日をとても楽しみにしていらしたことと思います。私たちにとりましても、お茶の水女子大学で皆さまとご一緒に過ごした時間は、何物にも代え難い大切な想い出です。ご家族には、私たち教職員からのお祝いと感謝の気持ちをお伝えいただきたいと思います。限定配信ではありますが、後ほどこの式の様子をご覧いただけるように準備いたしております。

皆さまは3,4年生の2年間、皇冠比分网_皇冠体育备用网址-【官网认证】感染防止のため、ほとんどの授業、学校行事や就職活動などがオンラインとなるなどの影響を受け、たとえ対面でも感染防止のため「距離を取ったマスク越し」という、それまでの私たちが全く予想もできない経験をされました。予定していた留学ができなくなってしまった方もいらしたことでしょう。そのような戸惑いや不安の中での大学生活であったにもかかわらず、様々な制約や困難を見事に乗り越え、今日のこの日を迎えられた皆さまに心からの敬意を表したいと思います。

現代は「人新世」と言われ、世界は気候変動、人口問題、皇冠比分网_皇冠体育备用网址-【官网认证】の感染拡大という様々な課題を抱えています。さらには、アフガニスタンやウクライナに見られるように世界の平和が脅かされるような状況と私たちは向き合い、普遍的な平和が願い求められる時代に生きています。そのような中、卒業という新しい始まりの時を迎えられた皆さまは、大きな喜びとともに多少の不安を胸に、就職、進学などそれぞれの新たな道を歩んでいかれることと思います。本学での専門分野の学びとともに、自然科学、人文科学、社会科学など、全人格的なトレーニングとも言える「文理融合リベラルアーツ」の学びによって得られた課題解決能力が、予測しがたい未来を生き抜いていかなければならない皆さまにとって、必ずや力になってくれることでしょう。

一方で、これからの世界には、課題とともに、人が切り拓く新たな知的?情的世界への多くの期待もあります。たとえば、「情報通信?AI?ロボット技術の進歩」、「宇宙や生命の起源の解明の進歩」とともに「人類が宇宙へ気軽に行けるようになる時代に向けた期待」、「国連が提唱するSDGsのような自然界とも融和した社会体制の提案」など、様々な新しい価値の創造が期待されます。私は皆さまがお茶の水女子大学で学ばれた知識や経験を基盤に、ご自身が好きなこと?したいこと、ご自分ができること、そして社会が皆さまに求めていることとしっかり向き合って、これからの道を歩んでいっていただきたいと思っています。

過去には、女性にとって結婚が「永久就職」と言われ、就職をしても結婚や出産を機に仕事を辞めて専業主婦になるという人が多くいた時代もありました。ところが今は結婚後も女性が仕事に就いている世帯が7割を占めいていて、もはや女性が仕事をし続けるのが当たり前の時代です。性別による仕事の制約も、今はなくなりつつあります。わが国では2020年代のなるべく早い時期に、意思決定過程に関与する女性の割合を30%にするという数値目標も設定されています。

このように女性の社会進出が強く求められ、進んできた一方で、皆さまよくご存じのように日本のジェンダー平等は諸外国と比べていまだに大きく遅れています。政治、経済分野への女性の参画が少なく、特に管理職等重要な決断をする立場に就いている女性が少ないこと、理工系分野での女性の活躍が遅れていることが指摘されています。しかも男女には給与の格差さえ残っているところがあります。

お茶の水女子大学は、未だ女性の社会進出が困難であった時代、明治8年、1875年に女性のための日本初の高等教育機関「東京女子師範学校」として設立されました。その後、女子高等師範学校、東京女子高等師範学校として、女子教育を先導してきました。第二次世界大戦後の昭和24年、1949年には、新制大学「お茶の水女子大学」となり、今から3年後の2025年に創立150周年を迎えます。その歴史を通して多くの卒業生が社会で活躍してきました。そのような伝統と歴史を背景に、お茶の水女子大学は国立の女子大学として、リーダーシップを発揮できる女性の教育を使命としてきました。今日、本学を卒業する皆さまには自信を持って、これまでになかった新しい視点や価値観を示し、国内外において、より良い未来を切り拓くリーダーとして、多様な分野で活躍し、社会の多様性と包摂、そして平等の実現に貢献していただきたいと心から願っています。

卒業生の皆さまには、志をともにした友人、これまで支えてくださったご家族、本学教職員など関係する多くの方々への感謝の気持ちを忘れずにいていただきたいと思っています。卒業生のネットワークである同窓会『桜蔭会』も、奨学金やコロナ禍での学修支援金など様々な形で皆さまの在学中の学びを支え応援してくださいました。桜蔭会のご助力で正門の門扉の復元、図書館の増改築、屋外エレベーター棟の設置、附属高等学校や理学部の改修など、キャンパス整備も実現しました。今日卒業される皆さまが桜蔭会員として、お茶の水女子大学の歴史をつなぐ一人として、これからも大学とともに歩んでくださったらとてもうれしく思います。

皆さまがこの学び舎から向かう新たな世界は、皆さまの活躍を待ち望んでいるに違いありません。未知の広がりの中で多様な価値観が交わり、時に対立する状況に身を置き、そこで自らの立場をはっきりと見出すには困難が伴うこともあるでしょう。そのような時には本学での学びを活かし、さらに研鑽を積んで身につけられた能力を発揮されることを心から願っています。そして、それぞれの立場で社会に貢献し、平和で持続可能なより良い未来を切り拓いていっていただきたいと願っています。

ここに改めてご卒業をお祝いし、皆さまお一人おひとりの未来が幸せで輝かしいものとなりますことを願い、告辞といたします。

本日はまことにおめでとうございます。

 お茶の水女子大学
第17代学長 佐々木 泰子