ページの本文です。
2019年1月15日更新
大学院理学専攻 博士後期課程 化学?生物化学領域 3年(日本学術振興会特別研究員 DC2)の黒木菜保子さんの論文が、アメリカ化学会が刊行する Journal of Physical Chemistry B 誌の注目論文に選定されました。
基幹研究院自然科学系の森寛敏准教授研究室では、種々の機能性液体が示す多彩な化学機能の最適化を目指した分子シミュレーション法(第一原理有効フラグメントポテンシャル分子動力学法;EFP-MD法)の開発とその応用研究に取り組んでいます。当該手法は、多数の分子が集合した大規模系の波動関数を露わに扱う代わりに、その構成要素である各小規模分子(フラグメント)の波動関数に基づき分子間相互作用を局在化軌道と多極子展開の手法を用いてコンパクトに表現することで、従来不可能であった大規模系の物性予測精度をもつ「ns(ナノ秒)オーダーの第一原理分子動力学シミュレーション」を、市販のパソコン上で可能にするものです。具体的に本論文では、超臨界条件にある溶液の動的物性(拡散係数)が、半定量的オーダーでシミュレーション可能であることを報告しています。極限状態における予測的溶液物性シミュレーションの可能性が拓かれました。(本論文をモチーフとしたアートワークが、Journal of Physical Chemistry B 誌の Cover Art として刊行されます;2019年1月刊行予定)。
超臨界状態にある NH3 分子の運動
(YouTubeへのリンクはこちら)
NH3 は1つの球として表示されており、その色は NH3 分子の分極の強さを表す。時間と伴に分子が激しく動き回ること、超臨界 NH3 の内部は密度に揺らぎが見られること、その結果、時事刻々と各分子の分極度合いが変化することが分かる。
※本研究はJSPS科研費 16K13928, 18J11490?JST さきがけ JPMJPR16NC?JST ACT-I JPMJPR16UBによる助成を受けたものです。また、本研究推進に当たり、東工大学術国際情報センターの計算機資源を使わせて頂きました。(TSUBAME グランドチャレンジ大規模計算制度:H30年度課題 B 「超大規模第一原理有効フラグメントポテンシャル分子動力学計算による超臨界流体の熱力学物性予測への挑戦」)