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2010年4月13日更新
理学部化学科の棚谷綾准教授(大学院人間文化創成科学研究科先端融合系)が、平成22年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞されました。若手科学者賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた若手研究者を対象としたもので、今後の更なる飛躍が期待されます。
平成22年度科学技術分野の文部科学大臣表彰(公開終了)
今回、表彰業績となった「機能性芳香族アミドフォルダマーの構築と動的立体制御の研究」について、棚谷先生から紹介していただきました。
棚谷 綾
私は新しい機能や性質を持つ分子を創り出すことを研究しています。分子が機能を発揮するためには、1つの分子もしくはその集まりがどのような立体的な構造をとっているのか、それが周囲の環境に応じてどう変化するのかが重要です。私の研究では、アミド結合という化学構造に注目しています。アミド結合はペプチド結合とも呼ばれ、ペプチドやタンパク質の骨格を作っている重要な化学結合です。私たちがみつけたアミド結合の化学的性質を利用すると、例えば、らせん構造を持つ分子(下図、例1)、籠状の分子(下図、例2)、ベンゼン環が何層にも積み重なった分子(下図、例3)を創り出すことができます。現在、このような構造をもとに、それをどのような機能に結びつけていくかを試しています。例えば、らせん分子には、右巻きと左巻きがありますから、巻き方がどのように変化するのか、また、片方の巻き方だけに偏らせることができるのかなどは、分子の挙動を研究する上でとても面白い題材です。また、籠状分子は、中に空洞がありますから、空洞の大きさに合う分子を取り込むことが期待できます。分子を籠の中に閉じこめたり、放出したりすることが自由にできると、その分子の性質を変えることができます。また、層状の分子は電気を伝える性質などを研究しています。その他、下図の例4に示したように、例えば、温度の変化、pHの変化といった周りの化学的な刺激に応じて立体的な構造を変化させる分子を研究しています。このような環境の変化に応答する性質は、その変化を感じるセンサーとして使えると考えています。このように、分子で面白い形を創り、その機能を探るということを研究していますが、新しい「くすり」や「有機材料」の開発へ応用していくことも目指しています。