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泉田勇輝日本学術振興会特別研究員(PD)が日本物理学会若手奨励賞を受賞

2015年2月17日更新

この度、理学部情報科学科郡宏研究室の泉田勇輝日本学術振興会特別研究員(PD)が日本物理学会若手奨励賞を領域11(統計力学, 物性基礎論, 応用数学, 力学, 流体物理)の分野で受賞しました。本賞は「将来の物理学を担う優秀な若手研究者の研究を奨励し、学会をより活性化すること」を目的に2006年に設立され、今回は第9回目となります。

今回の受賞対象となった研究は、泉田研究員と北海道大学大学院理学研究院の奥田浩司氏による「熱機関の最大仕事率条件下での効率限界」に関する一連の共同研究です。
熱力学の理論では熱機関の最大効率は熱源の温度のみで決まり、無限にゆっくりと熱機関を運転する理想極限(準静的極限)で達成されます。しかしこうした理想化のもとでは仕事率(単位時間当たりの仕事)はゼロとなってしまうという実用上の問題が以前から知られていました。泉田研究員と奥田氏は有限の時間で運転された熱機関の数理モデルを提案し、計算機実験によって、最大仕事率で動く熱機関の効率は温度差の小さい極限で最大効率の半分になるというそれまで現象論的な予測であった効率限界を初めて数値的に実証しました。また分子運動論に基づく解析によってもこの振る舞いが再現できることを示しました。さらに非平衡熱力学を用いて、このような効率限界は作業物質の種類や熱源のサイズ、それらの物性値などによらない普遍性のあるものであることも確立しています。

これらの成果は熱エネルギーの有効利用が重要性を帯びる中、熱機関や熱デバイス一般の効率?仕事率を制御する際に有効な基礎理論として今後応用上もますます重要となっていくものと期待されます。授賞式及び受賞記念講演は2015年3月に開催される第70回日本物理学会年次大会早稲田大学早稲田キャンパスで行われます。

泉田研究員の受賞発表タイトルは、次のとおりです。

受賞題目

Yuki Izumida and Koji Okuda, “Molecular kinetic analysis of a finite-time Carnot cycle”, Europhys. Lett. 83, 60003 (2008); “Onsager coefficients of a finite-time Carnot cycle”, Phys. Rev. E 80, 021121 (2009); “Work Output and Efficiency at Maximum Power of Linear Irreversible Heat Engines Operating with a Finite-Sized Heat Source”, Phys. Rev. Lett. 112, 180603 (2014).

日本物理学会若手奨励賞については、こちらをご覧ください。
日本物理学会 - 日本物理学会若手奨励賞について
日本物理学会 - 第9回領域11若手奨励賞