ことばと世界 11 文法と意味:
戸次 大介 [理学部 情報科学科] |
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LA科目を担当して |
学校の国語・外国語の授業では「文法」を規範的な規則として学びますが、実は私たちはそのような規則を学ばないうちから母語を使用することができます。それでいて母語によるコミュニケーションが可能であることは、母語には私たちが意識していない内在的な法則性があることを示唆しています。ところが、誰もが言語を無意識に使いこなしているにも関わらず、これまで誰もその法則性の全体を記述することには成功していません。考えてみればこれは大変不思議なことです。
この科目で学ぶ「数理言語学」という分野では、日本語や英語といった自然言語の文法と意味に関わる法則を、数式を用いて解明していきます。中学高校の英文法でも「SVO」等の記号が登場しますが、それにはあまり納得できなかった人も多いと思います。数理言語学では、記号論理学やプログラミング理論の近年の成果を用いて、それらを遥かに精緻化した理論を展開します。このように、言語や哲学の問題も数学的な構造として記述し、数学の定理を活かして解く、ということが可能になってきています。 |
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学生の皆さんへ |
日本では、学問分野は大きく「文系」と「理系」に分けられていますが、それぞれ「世界を見る人間」と「人間が見る世界」を対象としていることを考えると、本来は渾然一体としたものです。しかし、文系で育った学生と理系で育った学生では、知識だけではなく、ものの見方自体が異なることがあります。この「文理の壁」を乗り越えるにはどうしたら良いか、皆さんと一緒に考えていければと思っています。 |
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コメント:戸次大介准教授 |
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授業(潜入ルポ?!) |
私は中学高校時代、国語・英語の文法問題が大の苦手でした。「決まり事」でかたずけられている正しい文法と呼ばれるものの根底にある理由が分からず、大変不快な思いをしたものです。受験勉強では無駄なこととして省かれてきたことが、この授業でその問題の深淵の一端に触れ、感銘いたしました。
この授業では話し言葉の法則性を見つけようと議論したりもします。
数式で表現するものもありますが、見慣れればそれもわかりやすいことに気付き、数学というものは表現形態として便利なものかもしれない、などと文系らしからぬことを思った授業でありました。 |
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取材:教育企画チーム |